kuroの読書日記

私が読んだ本の感想や紹介をします。ネタバレを含みますので抵抗のある方はブラウザバック推奨です。

塩狩峠(三浦綾子)

 

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)

 

 

 塩狩峠はかつての天塩国石狩国の境(現在は和寒町比布町)にある峠である。1898年に鉄道が敷かれ現在では国道40号道央道が並走し旭川-名寄その先の稚内までを結ぶ道となっている。(道央道は士別剣淵まで)

 本小説では1909年に実際に起きた列車分離、逆走事故による殉職事故を題材とし、多くの命を自らの犠牲によって救った若き鉄道職員の生涯を描いている。

 

 明治時代、キリスト教はヤソと呼ばれ多くの人には受け入れられていなかった時代である。武士の家系で生まれ、祖母に厳しく育てられた幼少時の信夫もまた、受け入れることは困難であった。しかし、要所要所にキリストの教えが現れ、信夫は考え、悩み成長していく。

 ある時路上で教えを説く男と出会い信夫は彼の路上での演説に引き込まれ心打たれた。「聖書のなかのどれでもいい。ひとつ徹底的に実行してみないか」と男は残し信夫のもとから去った。

 信夫はこの言葉の通り聖書のなかの教えを徹底的に実行した。「強盗に会い半死半生の人を助けないなんて不人情な、俺なら助けるに違いない」と、職と仲間からの信頼を失った同僚の隣人になることを決意した。しかし、後にこの同僚からの言葉で信夫は大きな過ちに気が付く。

 

 私がこの小説を手に取った理由は氷点が面白かったから。大した理由があったわけではないがこの小説には大きく感銘を受けた。人間の生き様とは、と非常に考えさせられた。この小説でも「汝の敵を愛せよ」と書いてあるが辻口家の話はまた今度にすることにして、塩狩峠を読了後は自分を省みた。自分はどうだ困った人の真の意味で隣人となれるのか、仇を憎まないのか。頭では解っている。しかし感情がついてこないうちはまだ青い。